退職金の受け取り方は、主に一時金として一括で受け取る方法、年金として分割で受け取る方法、一時金と年金を組み合わせる方法の3つです。ただし、実際に選べる方法や割合は、勤務先の退職金規程や企業年金の制度によって異なります。
退職金の主な受け取り方は3種類
| 受け取り方 | 特徴 | 向いている人の例 |
|---|---|---|
| 一時金 | 退職時などに、退職金をまとめて受け取る | 住宅ローンの返済や大きな支出に使いたい人 |
| 年金 | 一定期間、または終身で分割して受け取る | 退職後の生活費を定期的に確保したい人 |
| 一時金と年金の併用 | 一部を一括、残りを年金として受け取る | まとまった資金と毎月の収入の両方が必要な人 |
受け取り方を自分で自由に決められるとは限りません。まずは、勤務先の退職金規程や企業年金の案内で、選択できる方法、受け取り開始時期、受け取り期間を確認する必要があります。
一時金として一括で受け取る方法
一時金は、退職時や規程で定められた時期に、退職金をまとめて受け取る方法です。退職後すぐに使える金額が大きくなるため、住宅ローンの返済、住み替え、生活準備などに使いやすい点が特徴です。
税金の計算では、一般に退職金の一時金は「退職所得」として扱われます。退職所得には、勤続年数に応じた退職所得控除があり、控除後の金額を基に税額が計算されます。
退職所得控除の計算方法
退職所得控除額は、原則として次のように計算します。
- 勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
- 勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年)
退職所得の課税対象額は、原則として「(退職金の収入金額−退職所得控除額)×2分の1」で計算します。ただし、役員の勤続年数が短い場合などには、2分の1計算が適用されないことがあります。
退職金を一時金で受け取る場合は、通常、勤務先に「退職所得の申告書」を提出します。提出しない場合、退職金から所得税などが多めに源泉徴収されることがあるため、勤務先の案内を確認しましょう。
年金として分割で受け取る方法
年金方式では、退職金の原資を一定期間、または制度によっては終身で分割して受け取ります。退職後の収入を定期的に確保できるため、まとまった資金を一度に使う心配を抑えやすい方法です。
一方で、受け取り期間や運用の条件によって、最終的な受取総額が一時金と異なることがあります。また、年金として受け取る金額は、一般に公的年金等に係る雑所得として課税対象になる場合があります。
年金方式を選ぶときは、次の項目を確認してください。
- 何歳から受け取り始めるのか
- 受け取り期間は何年か、終身か
- 年金額はいくらか
- 受け取り総額はいくらになるか
- 受け取り開始前に亡くなった場合の取り扱い
- 受け取り中に亡くなった場合、遺族が受け取れるか
- 年金額の保証や運用による変動があるか
特に、年金方式では退職後の給与、公的年金、企業年金などと収入が重なることがあります。税金だけでなく、住民税や各種制度への影響も含めて確認すると判断しやすくなります。
一時金と年金を組み合わせて受け取る方法
制度で認められていれば、退職金の一部を一時金、残りを年金として受け取れます。まとまった支出に対応しながら、残りを定期収入に回せる方法です。
例えば、退職直後の生活費や住宅ローン返済に必要な分だけ一時金で受け取り、残りを年金にする、といった考え方ができます。ただし、受け取り割合を自由に決められるか、選択後に変更できるかは制度ごとに異なります。
どの受け取り方を選ぶかの判断基準
一時金と年金のどちらが有利かは、退職金額だけでなく、退職後の支出、ほかの収入、税金、資産の管理方法によって変わります。
一時金が向いている可能性があるケース
- 退職直後に住宅ローンの返済や住み替え費用が必要
- 退職後に大きな支出を予定している
- 自分で資金を管理・運用する予定がある
- 退職所得控除を利用でき、税負担を抑えられる見込みがある
年金が向いている可能性があるケース
- 退職後の毎月の生活費を安定させたい
- まとまった資金を自分で管理することに不安がある
- 公的年金の受給開始までの収入を補いたい
- 制度上、一時金より年金の受取総額が多くなる条件である
併用が向いている可能性があるケース
- 退職直後のまとまった支出と、その後の生活費の両方に備えたい
- 退職金をすべて一括で受け取る必要はない
- 一時金と年金の税金や受取総額を比較して、資金を分けたい
「一時金のほうが必ず得」「年金のほうが安心」とは一概にいえません。勤務先から、一時金と年金それぞれの受取額、税引前後の見込み額、受け取り期間を示してもらい、同じ条件で比較することが大切です。
退職金の受け取り前に確認すること
受け取り方を決める前に、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- 勤務先の退職金規程を確認し、選べる受け取り方を把握する。
- 一時金の場合の受取額、年金の場合の年額と受取期間を確認する。
- 退職所得控除や年金の課税関係を確認する。
- 住宅ローン、引っ越し、医療費など、退職直後に必要な金額を見積もる。
- 公的年金や再就職後の給与など、退職後の収入を整理する。
- 必要な一時金と、毎月必要な生活費を分けて考える。
退職金の受け取り方によって税金の計算方法が変わるほか、複数の退職金を近い時期に受け取る場合は、退職所得控除の計算に調整が入ることがあります。勤務先の説明だけで判断が難しい場合は、税務署や税理士などに具体的な受取時期と金額を示して確認してください。
確定拠出年金がある場合の注意点
勤務先に企業型確定拠出年金がある場合は、通常の退職一時金とは別に、年金資産の受け取り手続きが必要になることがあります。制度によって、一時金、年金、またはその併用を選べる条件や受け取り開始年齢が異なります。
退職後に転職する場合は、企業型確定拠出年金の資産を転職先の制度や個人型確定拠出年金に移す「移換」が必要になることもあります。退職金の受け取りを選ぶ前に、退職一時金、企業年金、確定拠出年金が別々の制度なのかを確認しましょう。
退職金の受け取り方は「制度」と「退職後の資金計画」で決める
退職金の受け取り方には、一時金、年金、両方の併用があります。最初に確認するのは、勤務先の制度でどの方法を選べるかという点です。
そのうえで、退職所得控除を使える一時金の税金、年金として受け取る場合の課税、退職直後の支出、毎月の生活費を比較します。退職金規程と受取額の試算を用意し、税引後の金額と資金の使い道を並べて判断しましょう。








