退職代行を利用しても、未払い給与を請求できます。退職代行を使ったことを理由に、働いた分の給与を受け取れなくなることはありません。ただし、退職代行業者が会社と給与額の交渉や合意をできるかは、業者の種類によって異なります。
退職代行を使っても未払い給与の請求権はなくならない
未払い給与とは、すでに働いたのに支払われていない賃金のことです。たとえば、最後の給与、未払いの残業代、休日出勤手当、深夜割増賃金などが該当する可能性があります。
退職の方法にかかわらず、会社は働いた分の賃金を支払う必要があります。退職代行を使ったことや、会社と直接話していないことだけを理由に、未払い給与が消滅するわけではありません。
賃金の支払いを求める場合、労働者から請求があれば、退職時に7日以内の支払いを求められる制度があります。ただし、賃金の計算や残業時間などに争いがある場合、実際の解決には別途交渉や法的手続きが必要になることがあります。根拠は労働基準法第23条です。
退職代行業者によって、できる請求の範囲が違う
未払い給与を請求できるかどうかだけでなく、誰が会社と交渉できるかを確認することが重要です。退職代行には、主に一般の退職代行業者、労働組合、弁護士が対応するものがあります。
| 依頼先 | 退職の意思を伝える | 未払い給与の交渉 | 裁判などの法的手続き |
|---|---|---|---|
| 一般の退職代行業者 | 通常は可能 | 原則としてできない | できない |
| 労働組合 | 可能 | 団体交渉として対応できる場合がある | 代理人としての訴訟対応はできない |
| 弁護士 | 可能 | 可能 | 可能 |
一般の退職代行業者を利用する場合
一般の退職代行業者は、本人に代わって退職の意思を会社へ伝えることが主な業務です。未払い給与の支払いを求める意思を伝えることはできても、金額の交渉や支払い条件の合意まで行うことは原則としてできません。
会社が「退職日までの給与を支払う」と応じた場合でも、未払い残業代の計算や金額の交渉まで依頼できるとは限りません。契約前に、給与請求について「何をしてくれるのか」を確認してください。
労働組合が運営する退職代行を利用する場合
労働組合が運営する退職代行は、組合員の労働条件について会社と団体交渉を行える場合があります。そのため、未払い給与や残業代について、会社との交渉を依頼できる可能性があります。
ただし、すべての労働組合が同じ対応をするとは限りません。加入方法、組合費、交渉できる内容、退職後の対応を契約前に確認しましょう。
弁護士に依頼する場合
弁護士は、未払い給与や残業代の金額を計算し、会社への請求や交渉、必要に応じた労働審判・訴訟などの手続きを代理できます。
会社が支払いを拒否している、残業代の計算が複雑、給与額について争いがある、損害賠償なども請求したいといった場合は、弁護士への依頼が適しています。弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件の代理や和解などを行うことには制限があります。詳しくは弁護士法第72条を確認できます。
未払い給与を請求する前に集めるもの
請求額や未払いの事実を説明するため、次の資料をできるだけ保存します。退職代行に依頼する前に集められるものは、会社のパソコンやアカウントを使わず、本人が保管できる範囲で保存してください。
- 雇用契約書、労働条件通知書
- 給与明細、給与の振込記録
- タイムカード、勤怠記録、シフト表
- 出退勤時刻が分かるメールや業務記録
- 残業や休日出勤を指示されたメール、チャット
- 会社に給与の支払いを求めた記録
- 退職日と最終出勤日が分かる資料
特に残業代を請求する場合は、実際に働いた日と時間が分かる記録が重要です。タイムカードがなくても、パソコンのログイン記録、メールの送信時刻、入退館記録などが手がかりになることがあります。
未払い給与を請求する手順
請求方法は、未払いの有無が明確か、会社が争っているかによって変わります。一般的には、次の順番で進めます。
- 未払いの内容と金額を整理する。給与、残業代、深夜割増賃金などを分け、対象となる勤務日と支払われていない金額を確認します。
- 証拠を保存する。雇用契約書、給与明細、勤怠記録、会社とのやり取りを手元に残します。
- 会社へ支払いを求める。請求する給与の種類、対象期間、金額、支払期限、振込先を文書やメールなどで明確に伝えます。
- 必要に応じて専門機関へ相談する。会社が支払わない場合は、労働組合、弁護士、労働基準監督署などに相談します。
- 交渉で解決しない場合は法的手続きを検討する。弁護士を通じた請求や、労働審判、民事訴訟などが選択肢になります。
退職代行を利用する場合は、依頼時に「退職の連絡だけでなく、未払い給与の請求もしたい」と伝え、交渉まで対応できる契約かを確認してください。一般の退職代行業者に交渉を任せられない場合は、自分で会社へ請求するか、労働組合や弁護士へ別に依頼します。
未払い給与の請求には期限がある
給与の請求権には消滅時効があります。現在の労働基準法では、賃金請求権の消滅時効は原則として賃金の支払期日から5年ですが、当分の間は3年とする経過措置が設けられています。対象となる賃金の支払期日によって扱いが異なるため、古い未払い給与は早めの確認が必要です。
消滅時効の起算点は、実際に退職した日ではなく、原則としてそれぞれの給与の支払期日です。請求を検討している場合は、給与明細や就業規則で支払期日を確認し、時効完成が近いときは弁護士などに相談してください。
退職代行を選ぶときの確認ポイント
未払い給与の請求を目的にするなら、料金だけでなく、次の点を確認することが大切です。
- 運営者が一般業者、労働組合、弁護士のどれか
- 会社との給与交渉まで対応するか
- 残業代の計算をしてくれるか
- 会社が支払いを拒否した場合の対応範囲
- 追加料金の有無
- 請求できなかった場合の費用や返金条件
「未払い給与を請求できる」と書かれていても、実際には請求の意思を伝えるだけで、金額交渉は含まれていない場合があります。申込み前に、対応範囲を契約書や利用規約で確認しましょう。
退職代行を利用しても未払い給与は請求できます。ただし、一般の退職代行業者は給与交渉までできないことがあるため、交渉を任せたい場合は、対応できる労働組合または弁護士を選び、給与明細や勤怠記録などの証拠を準備してから依頼するのが基本です。








