退職代行を利用しても、有給休暇の残日数が自動的に消えることはありません。退職日までに有給休暇を取得できる日数が残っていれば、退職日を変えずに使い切ることが可能です。ただし、退職日を過ぎてから取得することはできず、使い切れなかった分が会社から自動的に買い取られるわけでもありません。
退職代行を使うと有給休暇の残日数はどうなる?
退職代行の利用は、有給休暇の残日数や取得する権利を失わせる理由にはなりません。有給休暇は、退職代行を使うかどうかではなく、勤続期間や出勤率などの条件を満たして発生しているか、そして退職日までに取得できるかで決まります。
退職時の有給休暇は、主に次の3つの扱いになります。
- 退職日までに取得する
- 会社と合意して、残日数を買い取ってもらう
- 取得も買い取りもせず、未消化のまま終了する
このうち、退職時に会社が未消化分を必ず買い取らなければならないという決まりはありません。そのため、残日数を使いたい場合は、退職日までの期間を確保して、退職日より前に取得することが基本です。
有給休暇を使い切る場合の退職日の考え方
有給休暇を使い切る場合は、最終出勤日と退職日を分けて考えます。有給休暇を取得している期間も、退職日までは在籍している状態です。
たとえば、会社に出勤する最終日が6月20日で、残っている有給休暇が10日あるとします。6月21日以降を有給休暇にして、6月30日を退職日にすることは、日数や会社の休日などが合えば可能です。この場合、6月21日以降は出勤せず、有給休暇を取得している状態になります。
ただし、これは説明のための計算例です。実際に何日使えるかは、残日数だけでなく、土日祝日などの休日、会社の所定休日、退職日、半日・時間単位の有給休暇の扱いによって変わります。
有給休暇の取得日数を計算する例
仮に、退職日が6月30日、6月20日が最終出勤日、6月21日から30日までの会社の勤務日が7日、残っている有給休暇が10日だとします。
この場合、退職日までに取得できるのは原則として7勤務日分です。残りの3日分は、退職日を延ばさない限り取得できません。退職日を過ぎて有給休暇を取得することはできないためです。
会社は有給休暇の取得を拒否できる?
年次有給休暇は、原則として労働者が指定した時季に取得する制度です。会社が取得時季を変更できる「時季変更権」はありますが、事業の正常な運営を妨げる場合など、法律上の条件があります。年次有給休暇の基本的なルールは、労働基準法第39条で定められています。
一方で、退職日を過ぎた日へ有給休暇の取得日を変更することはできません。退職日が決まっている場合、会社が別の日への変更を求めても、退職日以降に取得することはできないため、実際には取得できる期間が限られます。
また、次のような場合は、会社が示す残日数と本人が考えている日数が異なることがあります。
- 今年付与された日数だけでなく、前年からの繰越分がある
- 古い有給休暇から消化するか、新しい分から消化するかで計算が違う
- 有給休暇の一部をすでに取得している
- 付与日や出勤率の計算が異なる
- 有給休暇の時効により、古い分が消滅している
年次有給休暇の請求権は、原則として基準日から2年間で時効により消滅します。残日数を確認するときは、給与明細だけでなく、会社の勤怠システムや年次有給休暇の管理簿も確認してください。
退職代行に有給休暇の取得を伝えてもらえる?
退職代行業者が会社へ「有給休暇を取得したい」「退職日をこの日にしたい」と伝えること自体は、サービスの内容に含まれる場合があります。ただし、退職代行業者が会社と有給休暇の日数や退職条件を交渉できるとは限りません。
弁護士でない退職代行業者が、報酬を受けて会社と法律上の権利について交渉することには制限があります。会社が有給休暇の取得を拒否した、残日数を争っている、未払い賃金や損害賠償などの問題があるといった場合は、弁護士や労働組合が運営する退職代行など、交渉に対応できる窓口を選ぶ必要があります。
依頼前に、次の点を確認しておくと判断しやすくなります。
- 有給休暇の取得希望を会社へ伝えられるか
- 会社との交渉に対応できる運営主体か
- 有給休暇の残日数を確認するサポートがあるか
- 追加料金なしで対応できる範囲はどこまでか
- 会社が拒否した場合の対応方法が説明されているか
有給休暇の残日数を確認する方法
退職代行へ依頼する前に、自分の残日数をできるだけ確認しておくと、退職日までに使える日数を計算しやすくなります。
- 給与明細、勤怠システム、年次有給休暇の管理画面を確認する。
- 付与された日数、取得した日数、前年からの繰越分を確認する。
- 古い有給休暇が2年の時効にかかっていないか確認する。
- 最終出勤日から退職日までの勤務日数を数える。
- 退職代行へ、残日数と希望する退職日・最終出勤日を具体的に伝える。
会社の記録と自分の記録が違う場合は、付与日、取得日、残日数が分かる資料を保存してください。給与明細のほか、勤怠画面のスクリーンショットや会社からのメールも確認材料になります。
有給休暇の買い取りはできる?
在職中の有給休暇を、最初から買い取りにして取得させない扱いは、年次有給休暇の制度に反するおそれがあります。一方、退職時に使い切れない有給休暇について、会社が任意で金銭を支払うことまで一律に禁止されているわけではありません。
ただし、退職時の買い取りは会社の義務ではないため、会社が応じるとは限りません。買い取りの有無や金額を退職条件として交渉したい場合は、退職代行業者が対応できる範囲を事前に確認してください。
有給休暇が残ったまま退職する場合の注意点
退職日がすでに決まっていて、有給休暇の残日数が退職日までの日数を上回っている場合、すべてを取得するには退職日を後ろにずらす必要があります。しかし、退職日を変更できるかは、会社との合意や雇用契約の状況によって決まります。
また、会社の承認が必要ないと考えて無断で休むのではなく、有給休暇をいつ取得するかを明確に伝えることが大切です。退職代行を利用する場合も、「最終出勤日はいつか」「有給休暇の開始日はいつか」「退職日はいつか」を区別して伝えてください。
会社が有給休暇の取得を拒否し、理由の説明もない場合や、賃金の支払いをめぐって問題がある場合は、労働基準監督署、労働組合、弁護士などへの相談を検討します。相談先によって対応できる内容が異なるため、未払い賃金や取得拒否など、何が問題なのかを整理して伝えましょう。
退職代行を利用しても有給休暇の残日数は消えません。退職日までに取得できる日数を確認し、最終出勤日・有給休暇の取得期間・退職日を決めてから、依頼する退職代行が会社との交渉に対応できるかを確認することが重要です。








