退職代行は管理職でも利用できる?

退職代行は管理職でも利用できる?

退職代行は、管理職でも利用できます。「部長」「課長」などの役職が付いていても、会社と雇用契約を結ぶ従業員であれば、退職の意思を自分で伝える代わりに退職代行へ依頼できます。

ただし、管理職という肩書きではなく、雇用契約上の従業員なのか、取締役などの役員なのかによって、利用できるサービスや退職手続きが変わります。また、引き継ぎや貸与品の返却が多い管理職では、退職日や連絡方法を事前に整理しておくことが重要です。

管理職でも退職代行を利用できる理由

管理職であることだけを理由に、退職代行の利用が禁止されるわけではありません。一般社員と同じく、雇用契約を結んで働く管理職は、退職する意思を会社へ伝える必要があります。

退職代行は、その意思を本人に代わって会社へ連絡するサービスです。管理職本人が会社の代表者や取締役でない限り、役職が高いことだけで退職できなくなるわけではありません。

期間の定めがない雇用契約では、民法上、退職の申し入れから一定期間が経過すると雇用契約を終了できるとされています。具体的な退職日や、会社の就業規則との関係は、雇用契約の内容や給与の定めなどによって確認が必要です。民法第627条

「管理職」と「役員」は分けて考える

退職代行を利用できるか判断するときは、肩書きではなく契約上の立場を確認します。主な違いは次のとおりです。

立場 退職代行の利用 確認すること
課長・部長などの管理職 利用できる 雇用契約、退職日、引き継ぎ、貸与品
執行役員 契約内容によって異なる 従業員としての雇用契約があるか
取締役 通常の従業員向け退職代行とは扱いが異なる 役員の辞任手続き、会社法上の登記や後任の有無
代表取締役 一般的な退職代行だけでは対応しにくい 代表権、取締役の辞任、会社の機関設計

執行役員は会社ごとに制度が異なり、従業員としての雇用契約を残している場合もあります。反対に、取締役や代表取締役は、従業員の「退職」ではなく、役員の「辞任」として手続きを行うことがあります。

取締役の辞任後も、定款上または法律上必要な取締役の人数を欠く場合は、後任者が就任するまで権利義務を持つ取締役として扱われることがあります。役員に該当する場合は、一般の退職代行へ依頼する前に、会社の登記事項や役員規程を確認し、必要に応じて弁護士へ相談してください。会社法第346条

管理職が退職代行を選ぶときのポイント

管理職の場合は、単に「退職の連絡をしてもらえるか」だけでなく、会社との交渉が必要かどうかでサービスを選びます。

退職の意思を伝えるだけなら一般の退職代行

退職日や有給休暇の扱いが決まっていて、会社へ退職意思を伝えるだけであれば、一般企業が運営する退職代行でも対応できる場合があります。

ただし、一般企業の退職代行は、本人に代わって退職の意思を伝えることはできても、会社と退職日や有給休暇、未払い賃金などを交渉することはできません。依頼前に、対応できる範囲を確認してください。

退職日や有給休暇を交渉するなら労働組合または弁護士

「退職日を早めたい」「残っている有給休暇を使いたい」「会社から損害賠償を請求されている」など、会社との交渉が必要な場合は、交渉に対応できる労働組合や弁護士への依頼を検討します。

未払い賃金、パワーハラスメント、損害賠償請求、競業避止義務などの法的な争いがある場合は、弁護士に相談できるサービスのほうが適しています。退職代行業者が弁護士でない場合、法律事務や会社との交渉まで依頼できるとは限りません。

管理職が退職代行を使う前に確認すること

管理職は担当業務や部下の情報を多く持っているため、退職代行を利用する前に、次の項目を整理しておくと手続きが進みやすくなります。

  1. 自分の契約上の立場を確認する。雇用契約を結ぶ従業員なのか、取締役などの役員なのかを、雇用契約書、労働条件通知書、登記事項などで確認します。
  2. 希望する退職日を決める。無期雇用か有期雇用か、就業規則にどのような退職手続きがあるかを確認します。退職代行を使っても、契約上の期間や法的な条件が自動的に変わるわけではありません。
  3. 有給休暇や未払い賃金を確認する。残日数、給与の締め日、未払いの残業代や手当がある場合は、交渉が必要かどうかを整理します。
  4. 会社の情報を持ち出さないようにする。顧客情報、営業資料、個人情報、社内データなどは、退職準備のために自分の端末へコピーしないでください。保存場所や返却方法が分からないデータは、退職代行や弁護士に相談します。
  5. 貸与品と引き継ぎ資料を整理する。社員証、パソコン、スマートフォン、鍵、制服、社用車などを一覧にし、返却方法を決めます。引き継ぎは、必要な範囲で書面やデータにまとめます。
  6. 依頼先の対応範囲を確認する。退職意思の伝達だけか、退職日の交渉、有給休暇の請求、会社からの連絡への対応まで含むのかを確認します。

管理職だから退職できないと言われた場合

「管理職だから辞められない」「後任が決まるまで退職できない」と会社から言われても、それだけで退職が不可能になるとは限りません。退職の可否は、管理職という肩書きではなく、雇用契約の種類や退職の手続きによって判断します。

一方で、引き継ぎが不十分なまま退職した場合に、具体的な損害が発生したとして会社から請求を受ける可能性まで否定することはできません。通常の業務上の引き継ぎと、会社の機密情報を持ち出すことや意図的に業務を妨害することは別の問題です。

有期雇用契約の途中で退職する場合は、無期雇用とは扱いが異なります。やむを得ない事情があるか、契約期間が1年を超える契約で一定の条件を満たすかなど、個別の確認が必要です。労働基準法第137条

退職代行を利用する前に最初に確認すること

まず、雇用契約書や労働条件通知書を見て、自分が従業員としての管理職なのか、役員なのかを確認してください。そのうえで、希望退職日、有給休暇の残日数、会社と交渉したい事項、返却する貸与品を整理します。

従業員としての管理職で、退職の意思を伝えるだけなら退職代行を利用できる可能性があります。退職日や賃金の交渉が必要なら労働組合または弁護士、取締役や代表取締役に該当するなら役員の辞任手続きに対応できる専門家を選ぶことが重要です。